ターニングポイント


ただ、僕の中では試合はもうおまけ、そんな気持ちでしたので、あまり悔しくもなければ涙もなく。彼らがこの2年半積み上げてきた努力、困難に向き合って乗り越えてきた過程、それらが彼らの結果であって、僕はそれを傍で十二分に見せてもらったので、すでに満足でした。試合後、保護者達の前でキャプテンのカンタが涙ながらに感謝の言葉を述べている時には、ちょっとウルッときましたが。
カンタはそれ以降、部活はきっぱりやめ、毎日夜遅くまで予備校に篭って受験勉強に励んでいます。去年参加した玉竜旗も全く行く気はなかったらしく、話に上がりませんでした。僕はサポート役として博多に遊びに行く気満々だったのですが。また、千葉県の市町村対抗の剣道大会に出る成田市の代表チームにどうか、というお誘いもいただきました。成田の看板を背負って戦いたい、というのは小学生の頃から夢のまた夢だったのでとても光栄で嬉しく拝命すれば良いのにと思ったのですが、本人は大学受験があるので来年またお声がけいただけたら、とお断り。剣道で培った、目標に向かってまっすぐ取り組む姿勢、今のところ受験にもきちんと活かされているようで、僕が口を挟む必要も全くなさそうです。




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県大会、天晴れ



はじめ、の声と同時に果敢に攻めるカンタ。
初太刀の面はいきなり惜しかった。でもこれは地に足がつかず出小手でやられるパターンか、とさらに弱気の虫が頭をよぎる父。ただ動きに硬さは見られません。いかにも東海大浦安という「正剣」の相手に対し、負けず劣らずの美しく、かつ気合い充分な姿勢はいつもより大きく映りました。一瞬、どちらがどちらかわからなくなる時があるほど。しかも、一足一刀の間合いの攻防を丁寧に行い、そこから攻めた、と思うとそれは大概カンタ。さらには相手の得意な応じ技もことごとく潰していく堂々たる戦いぶり。
案外いけるかも、と思い始めた2分過ぎ、引き面を見せてからの面がいい感じだったのを見て、ひょっとしたら、と色めきました。そして2分50秒、会心の小手。打ち終わりの姿勢が少し崩れたのと、相手選手に、カンタ曰く「打たれても打たれていないように見せる技術」があり、旗こそ上がりませんでしたが、向こうの手元は完全に上がっていて、これは本当に惜しかった。その後も果敢に攻め続け、本戦が終了。4分もつとは思わなかった。
延長に入ってからの初太刀の面はまたもや相手の頭を捉え、完全に試合を支配している感じでした。そして1分、強烈な相面!やった、とった!と思ったら、3本の旗は相手の赤に。後に確認したら、体勢はカンタも、相手の小さく、でも強い出頭面が先。もしも左足を継がずに右足の踏み込みのみで打てていたら勝っていた、惜しかった、とは、動画を見て下さった高段者のお言葉で、でも非常に強かった、勝っても不思議ではなかった、褒めてあげて、とも。見る人が見ても紙一重の敗戦だったようです。
予想を遥かに上回る試合内容に、僕は、悔しい以上に満足感がありました。カンタも、試合後いつもなら僕が近づくのを避けるそぶりをするのに、今回は試合場から出てくるのを待ち受けていた僕に近づいてきて「やられちゃった」と。よくやった、見事だと抱擁した僕に対し、カンタは、対峙してみて流石トップ選手と感じた、外から見ているよりも力の差がある、感動するくらいの綺麗さ、強さだった、と悔しがりながらも清々しい感想でした。
その後現れた顧問の先生は本人よりも僕よりも興奮状態。俺は勝つと思っていた、いい勝負し出してこれはいったと思った、学校名があれば旗が上がったかも、悔しい、と。そして、相手高の先生が「途中でやられたと思った、実に素晴らしい剣道をする子だ」とお褒めの言葉を下さったとも教えてくれました。
その後、その相手選手が2回戦以降勝ち上がっていくのを密かに応援。4分かけずに倒していくおかげで、ますますカンタの一戦が輝くような。このまま優勝して欲しいし、するのだろうと思っていましたが、準々決勝で同門対決、しかも団体戦のメンバー外の選手に敗れ、第5位でした。彼ら含めベスト8に4人。いやぁ。恐ろしい学校だ。



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やっぱり君は強かった

次の3回戦の相手も2年生で、2回戦を見た限りでは心配なく。前半に、中学時代に得意にしていたもののコロナ禍のルールで使えなかった引き面を決めたので、これで安心と思っていたら、後半、練習中の技が決まらなかった残心で面にのられ、勝負に。保護者の皆様から心配する声が上がりましたが、相手が一か八かの博打をしてきてそれがはまらない限りはまず大丈夫だろうとみていました。そして実際、その直後、得意の飛び込み面が炸裂して勝利し、4回戦進出を決めて午前中終了。

そして後半戦。ベスト8がけの試合のトップバッターだったカンタ。本当はここでシード選手を倒すつもりが、彼は3回戦で敗れていたのはちょっと残念。その勝者のまたもや2年生が相手。朝の硬さはどこへやら、来年は上位候補間違いない彼を1分かからず、面と出小手で粉砕。僕がピリピリする間もなくベスト8進出を決めました。

県大会出場をかけた大事な準々決勝。相手は初対決ながら中学時代から名前は知っている選手。実はここでも想定は異なり、先月二本負けを喫した選手が来ると思い、難関だな、と身構えていました。ところが4回戦で彼を倒してくれたのはありがたかった。というのも、きちんと中心どりをしてくる学校の選手なのでカンタとしてはやりやすい。そんな風にポジティブに思いながらも、でも、というネガティブな気持ちも持ちながらと、とてもドキドキしての観戦。なので開始45秒、鮮やかな相面で旗が上がった時は、相手と勘違いしたくらい。その後は完全にカンタペースで、徐々に僕もこれはいけるぞと不安が和らいできた矢先、鮮やかな逆胴で2本目を奪取。実力伯仲の中、まさかの大技で決め、チームメイト、保護者の皆さん、そして応援して下さってきた他校の方々からもやった、おめでとう、と大きな拍手。僕は、ちょっと衝動的に泣いてしまった。悲願の県大会を、最後の最後に決めてくれるとは。
準決勝はなんと同門対決。中学時代まではカンタにとって高い高い壁で、通算0勝10敗の「絶対王者」とここで対戦するのは、幸せの一言。うちの学校は部内対決をしないので雌雄を決するのは高校では初めて。大会で勝ち上がってきた経験数は彼が圧倒的、しかも今日はノっている。一方、カンタは彼を抜いた、という評もあります。

3位決定戦ではカンタは疲れからかあるいは気持ちが切れたのかやや雑になり、延長で、負けパターンの出小手を取られての敗退、結局4位の結果となりました。

チームメイトに負けての4位での県大会進出に本人は満足していないようでしたが、僕としてはラストチャンスで花開いたのが見られ幸せです。悲願叶った県大会、せっかくなら上を目指して、でも楽しんできて欲しい。仲間や後輩達からの、大将との優劣の評価をひっくり返すには、彼より先に負けないことだね。


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仲間

顧問の先生の、部長と大将は兼務しないという方針で、今年の初めに部長から外れ大将のポジションに就いていたカンタ。本人は大喜びで、練習試合では中堅に入る時よりも勝率が高かったものの、カンタと交代で部長、そして中堅に入った仲間もまた、小学生時代から慣れたポジション故に、大将に入った時の方が成績が良い。


次の2回戦の相手は、ベスト4に入ったこともある名門の私立高で、新人戦ベスト16のCシード。でも、ここを勝たないと最後の戦いとなる総体=インターハイの優先出場権が得られないし、その次の超強豪校を倒すのが一つ目標になっているので負けられません。




3回戦の相手は、千葉県屈指の強豪、特に今年のチームは頂点を狙える強さで、控えの選手までが個人戦で県大会に出場しています。監督同士が親しいこともあり、練習試合をしたこともありますが、歯が立ちませんでした。




やっと本領発揮、3試合で価値ある2勝に1つの引き分けで負けなし。

残すはインターハイのみ。その個人戦、地区ブロック大会は、今週末。


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花咲かず



一方、チーム内3番手の後輩が躍動、ベスト4!学校としてこの20年で初の快挙でした。

閉会式終了後、おめでとうございますとお声がけした顧問の先生からの第一声は「うちの二本柱はどうしたんだよ〜」でした。カンタのチーム内ライバルも1回戦でよもやの敗戦。


残るは関東大会県予選団体戦、そして総体の個人と団体、あと2ヶ月。もしも総体地区予選会で負けてしまえばあと1ヶ月。剣道続けて12年目。最後くらい主役の座につくことを願いつつ...。


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